毎年1月に発表され、世界の観光トレンドを決定づける名物企画「52 Places to Go(行くべき52カ所)」。2026年に岩手県盛岡市が世界第2位、2026年に山口市が第3位に選出された際、日本国内では「なぜ東京や京都ではなく地方都市なのか?」と大きな驚きをもって迎えられました。
選出の背景を探ると、東京・銀座に拠点を置くニューヨーク・タイムズ日本支局の記者や、日本在住の寄稿ライター陣による極めて解像度の高い現場取材の存在が浮かび上がります。
同紙が評価基準としたのは、過度な観光地化(オーバーツーリズム)に侵されていない「歩いて巡れるコンパクトな街並み」と「固有の日常文化」でした。盛岡では大正時代の西洋建築と清流、老舗の喫茶店文化やわんこそばの温もり。山口では国宝・瑠璃光寺五重塔を抱く歴史的景観や温泉街、地元住民が醸し出す穏やかな空気感が高く評価されたのです。
「外国人旅行者が求めているのは作られた観光アトラクションではなく、日本のローカルな日常と精神性である」という、独自のジャーナリスティックな視点こそが選出の決定打となりました。この報道を機に現地を訪れた欧米人観光客が急増し、地方都市のインバウンド戦略に地殻変動をもたらしたのは記憶に新しいところです。