長年、家庭料理の現場では「ゴーヤの苦味の元凶は白いワタにあるため、スプーンで跡形もなく削り落とすべし」と信じられてきました。しかし、女子栄養大学などの研究機関や食品分析のデータによって、この常識は覆されています。実際に苦味成分を測定すると、白いワタや種には苦味がほとんど含まれておらず、最も苦味が強い部位は緑色の外皮とイボの表面部分であることが判明しています。
ゴーヤの特有の苦味を作り出している主成分は、ウリ科植物特有の配糖体であるモモルデシンと、複数のアミノ酸・サポニン類です。モモルデシンには胃液の分泌を促して食欲を増進させたり、血糖値の上昇を穏やかにしたりする優れた健康効果があります。しかし、水溶性かつ脂溶性の両面を持つため、適切な下処理を行わないと口の中に強烈な収斂味(しゅうれんみ)を残す原因となります。
では、なぜ「ワタを取る」という工程が存在するのでしょうか。その理由は苦味ではなく、食感と水っぽさの防止にあります。綿状の組織は加熱すると水分を吸ってドロドロになり、料理全体の歯ごたえを損ねてしまいます。スプーンの縁を使って種と柔らかいワタを軽くこそぎ落とす程度で十分であり、果肉の内側が青白く透けるほど過剰に削る必要はありません。