揚げたてはもちろん、お弁当に入れて時間が経っても衣がサクサクと心地よい音を立てる「いわしの竜田揚げ」を作るには、下処理・下味・粉打ちの3段階に決定的なポイントがあります。
まず、仕上がりを左右するのが生臭くならない下処理の真相です。いわしなどの青魚特有の臭みは、鮮度低下とともに発生する「トリメチルアミン」や、内臓・血合いの酸化脂質が原因です。水揚げから時間が経った大衆魚ほど、この成分が表面のドリップ(体液)に溶け出しています。真水で洗うと浸透圧で旨味が逃げて身が水っぽくなるため、濃度3%の立て塩(食塩水)で手早く洗い、血合いや残ったウロコを指の腹でやさしく落とすのがプロの鉄則です。洗った後は、厚手のキッチンペーパーで身の内側まで徹底的に水分を吸い取ります。この徹底した脱水作業こそが、臭みを消し去る最大の防壁となります。
次に、味がバチッと決まる失敗しない黄金比の下味タレの配合です。多くの家庭で味がぼやける原因は、みりんの甘みに頼りすぎることや、漬け込み時間の過不足にあります。取材した割烹料理長が推奨する黄金比率は以下の通りです。
【いわし4尾(正味約200g)に対する黄金比タレ】
・濃口醤油:大さじ1と1/2
・酒(清酒):大さじ1と1/2
・生姜の搾り汁:小さじ1(すりおろしではなく搾り汁を使うことで衣の焦げ付きを防止)
・みりん:小さじ1/2(甘みを抑え、キレのある醤油立ちにする)
漬け込み時間はジャスト10分から15分に留めます。30分以上放置すると浸透圧でいわしの水分が過剰に抜け、身がパサつくだけでなくタレが染み込みすぎて塩辛くなってしまいます。漬け上がったらザルに上げ、再度ペーパーで余分な調味料を軽く拭き取ることが、次の粉打ち工程への重要な架け橋です。
そして、衣がカリカリに揚がる決定的な理由は、片栗粉と小麦粉の配合比率のコツに集約されます。市販のレシピでは片栗粉100%を推奨するケースが多いですが、片栗粉のみだと揚げたては良くても、冷めると魚から出たわずかな湿気を吸って表面がグニャリとしがちです。検証の結果、最も持続性のある食感を生む比率は「片栗粉7:薄力小麦粉3」でした。グルテンを持つ小麦粉が強固な骨格を作り、片栗粉が表面をガラスのようにクリスピーに仕上げます。粉をまぶしたら余分な粉をしっかりはたき落とし、粉を吸って湿る前に170度の油へ投入することが、サクサク感を極める絶対条件です。