仮面ライダー生誕50周年記念作品として制作された『仮面ライダーBLACK SUN』において、中村倫也が演じたのはもう一人の主人公である秋月信彦(仮面ライダーSHADOWMOON)です。メガホンをとったのは、映画『孤狼の血』などで知られる鬼才・白石和彌監督。従来の子供向けヒーロー番組の枠組みを完全に解体し、怪人と人間の共存、差別、政治的闘争を赤裸々に描くハードボイルドな世界観が構築されました。
本作の最大のハイライトの一つが、南光太郎役を演じた西島秀俊との濃密な共演です。半世紀に及ぶ因縁と兄弟同然に育った二人の情念がぶつかり合う演技合戦は、見る者を圧倒しました。特にファンの間で語り継がれているのが、物語中盤で披露された中村倫也の魂の「変身」シーンです。
制作発表会見や当時のインタビューにおいて中村倫也は、「子どもの頃に誰もが憧れた変身ポーズを、この年齢、この重厚な作品で背負うことの責任を感じた」と述懐。怒りと哀しみを内包した眼光、静寂を切り裂くような無駄のない所作、そして低音で響く変身の掛け声は、既存の特撮の枠を完全に超越した芸術的な名シーンとして高く評価されました。