和食の基本を支える米麹には、大きく分けて「生麹」と「乾燥麹」の2タイプが存在します。米麹の種類と特徴を紐解く上で、起点となるのは「できたての麹から水分を蒸発させたか否か」という加工プロセスの違いです。
蒸した米に麹菌を種付けし、職人が温湿度を厳密に管理しながら約48時間かけて菌糸を繁殖させた状態が「生麹」です。しっとりとした手触りで、栗のような甘い芳香を放ちます。この段階での水分量はおよそ25〜30%前後。麹菌が生き生きと呼吸しており、米のデンプンを糖化するアミラーゼや、タンパク質をアミノ酸へ分解するプロテアーゼといった酵素力価の違いにおいて、活動の初速が極めて強いのが特徴です。
一方の「乾燥麹」は、完成した生麹に低温の温風を当て、水分を8〜10%程度まで乾燥させて菌の活動を一時的に休眠させたものです。製造過程で熱を加えすぎると酵素が失活してしまうため、各メーカーは低温でじっくりと水分のみを抜き取る高度な乾燥技術を採用しています。「乾燥させると栄養価が落ちるのではないか」と懸念されがちですが、乾燥麹は生麹の水分を抜いただけの構造であるため、主要なビタミン群やアミノ酸などの栄養成分そのものに大きな優劣はありません。
ただし、水分が抜けて菌が休眠状態にあるため、仕込み始めの分解スピードにはわずかなタイムラグが生じます。水分をたっぷりと含んだ生麹は仕込み直後から酵素が全開で働き、みずみずしく豊かな仕上がりの味と風味を生み出すのに対し、乾燥麹は液体を吸って酵素が目覚めるまでに一定の助走期間を要します。この特性の差が、後々の料理の成否を分ける基点となります。