イワタコーヒー店を語る上で欠かせないのが、注文を受けてから専用の銅板でじっくりと焼き上げられる厚焼きホットケーキです。直径約10cm、厚さはおよそ3.5cmの分厚い生地が2枚重なり、全体で高さ7cm近くに達するビジュアルは、多くの喫茶店ファンを釘付けにしてきました。
ここで知っておくべき現場のリアルは、厚焼きホットケーキの焼き時間だけで約20分〜30分かかるという点です。熱伝導率の高い特注銅板を使い、弱火でじっくりと蓋をして蒸し焼きにする工程は、機械化や効率化とは無縁の職人技。そのため、入店時(または列の先頭付近)でスタッフから「ホットケーキのご注文はございますか?」と事前に確認され、着席前に焼き始められる運用が定着しています。
1970年代後半、軽井沢や鎌倉をプライベートで訪れていたジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が、ふらりとこの店を訪れて中庭を望む席でくつろいだという逸話は、音楽ファンや観光客の間で今も語り継がれる歴史的事実です。さらに川端康成や大佛次郎といった鎌倉文士たちも日常の執筆の合間に足を運んでおり、文化人たちが求めた「変わらない静けさと確かな味」が、今もそのままのレシピと空間で受け継がれています。
ナイフを入れると、表面はサクッと香ばしく焼き固められており、中はスフレのような軽さではなく、どっしりとした密度の高い伝統的なカステラに近い質感。バターの塩気とシロップの甘みが染み込むことで、素朴でありながら奥深いコクが口いっぱいに広がります。