作詞・作曲を手掛けた片岡健太(Vo/Gt)は、当時の音楽誌の単独取材やメディア特番において、本作の着想について極めてパーソナルな体験を吐露していました。片岡は過去に突発性の発声障害を経験し、バンド活動の休止という絶望的な岐路に立たされた過去を持ちます。思い通りに進む筋書きなど存在しないという現実の無情さを、誰よりも骨身にしみて理解していた人物です。
音楽専門誌の取材記録によると、片岡は原作『ヲタ恋』を読み込んだ際、「好きなものを隠さなければ生きていけない不器用さ」に強い共感を覚えたと語っています。一般的な応援歌であれば「仮面を捨てて素直になろう」と説教じみたトーンになりがちなところを、片岡は「仮面を被ること=自分を守るための正当な手段」として捉え直しました。外で戦うために武装する時間を認めつつ、心を許せる誰かの前でだけはその防具を解けばいいという温かな視線が、歌詞の端々に宿っています。
制作当時、バンド内ではアッパーなブラスセクションと小川貴之(Key/Cho)によるピアノのコンビネーションが綿密に練り上げられました。明るい曲調であればあるほど、そこに宿る切実な本音が際立つという音楽的コントラストは、片岡健太が意図的に仕掛けた演出です。「フィクション」というフィクショナルな世界を通して、最も泥臭い「ノンフィクション」の本質を浮き彫りにする試みは見事に結実しました。