テレビウォッチャーや視聴者の間で時折生じる誤解の一つに、「ベテランアナウンサーが管理職になると画面から消えていく」という固定観念があります。一般的な民間企業であれば、課長や部長、局次長へと昇進するにつれて現場の実務から離れ、マネジメント専業になるのが通例です。そのため、「局次長になった伊藤アナが今も帯番組に出ずっぱりなのは、後輩が育っていないからではないか」という穿った見方をされることがあります。
しかし、これは現代のテレビ局における組織構造の盲点を見落とした解釈です。現代のキー局アナウンス室では、プレイングマネージャーとしての役割がこれまで以上に重視されています。コンプライアンス遵守が厳しく問われ、わずかな言い間違いや配慮不足が生放送の致命傷になりかねない現在の放送環境において、若手の手本として自ら最前線に立ち、背中でアナウンス規範を示す存在が不可欠なのです。
伊藤アナが現場に出続けるのは、後輩の不在による消極的理由ではなく、「生きた教科書」として番組の品格を保ちつつ、後輩アナウンサーに即時フィードバックを行うための積極的なマネジメント戦略であると言えます。