暖簾をくぐった瞬間にまず注文すべきは、やはり看板メニューである海ぼうず名物「黒おでん」です。一般的な関東炊きや関西風の澄んだおでんとは一線を画し、すべての種が竹串に刺され、深い黒褐色に染め上げられています。提供時には、イワシやアジの削り節に青のりを黄金比率でブレンドした特製の「だし粉(いわし粉)」がたっぷりと振りかけられ、立ち上る湯気とともに芳しい磯の香りが広がります。
絶対に外せない必食の具材筆頭は、静岡のソウルフードである「黒はんぺん」です。サバやイワシなどの青魚を骨ごとすり身にして作られる黒はんぺんは、出汁を芯まで吸い込むことでモチモチとした食感と濃厚な魚介のコクが劇的に増幅されます。さらに、箸を入れた瞬間にほろりと崩れるほど煮込まれた「名物・牛すじ」や、中まで漆黒の出汁が染み渡りながらも瑞々しさを保つ「大根」、黄身の芯まで味が乗った「煮玉子」は、まさに三種の神器と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
海ぼうず本店の魅力はおでんだけに留まりません。県外からの旅行者が歓喜する最大のストロングポイントは、静岡B級グルメのオールスターが一軒で完結するメニュー構成にあります。
- 黒はんぺんフライ:おでんと並ぶ静岡のソウルフード。サクサクの細かい衣に包まれたジューシーな黒はんぺんにソースをかければ、ビールが瞬く間に消えていく逸品。
- 富士宮やきそば:独特の強いコシを持つ専用麺に、肉かすの旨味とだし粉の風味が絡み合うB-1グランプリの覇者。
- 清水もつカレー:清水地区発祥の、柔らかく煮込まれたもつとスパイシーなカレーが融合した酒泥棒メニュー。
- 由比産桜えびのかき揚げ:駿河湾の至宝・桜えびを贅沢に使用し、香ばしい風味と軽やかな食感が際立つ名品。
これらの料理を受け止めるアルコール類にも一切の妥協がありません。静岡が誇る幻の銘酒「磯自慢」をはじめ、「開運」「初亀」「正雪」といった地酒の数々が揃い、静岡の食と酒のマリアージュを完璧な次元で体験させてくれます。