リニューアル前の十国峠といえば、昭和風情を残すドライブインとケーブルカーの印象を抱く人も少なくありませんでした。しかし現在、その風景は一変しています。山麓の標高666メートルに位置する拠点施設は「森の駅 箱根十国峠」として全面改装され、食事処や特産品ショップが洗練された空間へと生まれ変わりました。そして何より来訪者を惹きつけてやまないのが、山頂エリアに展開する「PANORAMA TERRACE 1059(パノラマテラス1059)」です。
十国(とおく=1059)の語呂合わせを冠したこのテラスには、段差を活かした階段状デッキや寝そべりながら空を仰げるハンモックベンチが巧みにレイアウトされています。南アルプスの山並みから湘南海岸、三浦半島、澄み渡る日には遠く房総半島までをも見渡す視界は、まさに唯一無二。人工的な構造物を極力低く抑えることで、訪れた人が自然の雄大さにそのまま溶け込める視覚的ランドスケープ設計が施されています。
テラスに隣接する「TENGOKU CAFE(天国カフェ)」の存在も、若年層やカップル、ファミリー層の滞在時間を大幅に延ばす原動力となりました。富士山を模したモンブランや、近隣の丹那牛乳を贅沢に使用した濃厚ソフトクリーム、青空に映えるスカイブルーのソーダなど、フォトジェニックでありながら静岡・箱根の豊かな食材に根ざしたメニュー構成は秀逸です。現地でカフェトレイを手にテラス席へと向かう来訪者の多さは、単に「風景を見る」観光から「風景の中で特別な時間を過ごす」体験消費への転換が完全に定着したことを物語っています。