誕生から半世紀以上の間に、数多くのアーティストが本作をカバーし、独自の色彩を与えてきました。それぞれの時代やジャンルを反映した代表的なアプローチを振り返ります。
1991年には、ロックシンガーの川村カオリ氏がアグレッシブなビートに乗せてカバーし、若者の焦燥感を代弁するストリート・ロックとして再定義しました。また、1998年の長野パラリンピック開会式では、世界的な歌姫アグネス・チャン氏や様々なシンガーによって歌唱され、平和と障害を越える連帯のシンボルとして国際的な舞台へ届き、国内外から絶賛を集めました。
海外への伝播において特筆すべきは、英語詞によるカバーです。カノン氏や海外合唱団によって歌われた英題『A Wings to Fly』(または『Wings to Fly』)は、原曲のニュアンスを巧みに英語の韻律へ落とし込んでいます。
【英語詞の主な対訳比較】
・日本語原詞:「今 私の願いごとが かなうならば 翼がほしい」
・英語詞表現:「If I could have just one wish in this life, I would ask for wings to fly」
(直訳:もしこの人生でたった一つだけ願いが叶うなら、私は飛ぶための翼を求めるだろう)
・日本語原詞:「悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ 行きたい」
・英語詞表現:「To the open sky where there is no sorrow, where I can be free forevermore」
(直訳:悲しみの存在しない開かれた空へ、永遠に自由であれる場所へ)
日本語特有の「行きたいよ」「つけてください」という繊細な余情や慎み深い願望に対し、英語詞では「where I can be free forevermore(永遠に自由であれる場所)」と、個の主体的自由の獲得がより明確に強調される傾向があります。言語構造の違いを超えて、大空へ飛び立ちたいという人間の根源的希求が、世界共通の言語として機能している好例と言えます。