人口減少が進む地方都市において、個人のベーカリーが生き残る道は決して平坦ではない。ECでの全国発送や冷凍パンのサブスクリプションなど、販路を広げる選択肢は無数にある。だが、リシェの軸足は常に新潟の店舗、そのショーケースの前に置かれている。
対面販売のカウンター越しに交わされる、短くも温かいやり取り。「今日のバゲットは少しクラストを薄めに仕上げてあります」「このカンパーニュは明日の朝、スープに合わせてみてください」。パンという日常の食品を介して結ばれる、作り手と買い手の濃密なコミュニティ。地域密着という言葉を記号化させず、日々の焼き上がりで証明し続けること。巨大資本のチェーン店には決して真似のできないこの距離感こそが、激変するフードビジネス界における最強の防波堤となっている。