月の周期にまつわる言説の中には、科学的なエビデンスが乏しいにもかかわらず、都市伝説として一人歩きしているものも少なくありません。その代表例が「満月や新月の日に出産が急増する」という説です。
古くから助産師の間などで「大潮の日は陣痛がつきやすい」と語り継がれてきた月の満ち欠け出産の関係性ですが、国内外の大規模な人口動態統計の分析では明確な結論が出ています。数十万件規模の出産データを解析した複数の疫学調査(米国ノースカロライナ大学や国内大学病院の医療統計研究など)によると、満月や新月の日に統計的有意差をもって出産数が増加する事実は確認されていません。
それにもかかわらず現場でそうした印象が残るのは、満月期に陣痛室が混み合った記憶が鮮烈に刻まれる「確証バイアス(自らの信念に合致する情報ばかりを記憶する心理作用)」による影響が大きいと専門家は分析しています。天体現象と生命誕生の神秘的なリンクにロマンを感じるのは自然なことですが、医療現場の現実は天候や気圧変動、母体の疲労度といった複数の複合要因によって動いています。
また、西洋占星術を発祥としてSNSなどで不安を煽りがちなのがボイドタイム過ごし方の真相です。ボイドタイムとは、月が他の天体と主要なアスペクト(角度)を形成し終えてから次の星座へ移動するまでの空白時間を指します。「この時間に重要な決定をしてはならない」「契約は破綻する」といった極端な言説が散見されます。
しかし、心理学や行動意思決定論の観点から見れば、ボイドタイムを「呪われた不吉な時間」と恐れるのは合理的ではありません。むしろ「日常の緊張を緩め、新しい決断を急がず、情報整理や内省に充てるインターバル」と捉えるのが健全です。同様に満月新月願い事やり方(新月に新たな誓いを立て、満月に達成できたことへの感謝と軌道修正を行う習慣)も、占術的な願望成就というより、認知行動療法的な目標設定と振り返りのフレームワークとして捉えることで、日常生活に極めて有益なメンタルケアとして機能します。