撤去された喫煙室のスペースは、現在どのような姿になっているのでしょうか。単に壁で塞がれただけと考えている利用者が多い中、現場では極めて実用的な設備投資が断行されました。JR各社が公表した改修計画の核心は、喫煙ルーム跡地を「災害用備蓄品置場」へとリニューアルすることでした。
日本列島を縦断する大動脈である新幹線は、近年激甚化する台風や集中豪雨、さらには巨大地震の発生によって、長時間の立ち往生を強いられるリスクが常に指摘されてきました。過去に発生した長時間停止のトラブルでは、乗客への飲料水やブランケットの配布が遅れ、車内環境の悪化が国会やメディアでも問題視された経緯があります。
そこでJR東海・JR西日本は、撤去した喫煙ブースの空間に以下のような防災資機材を体系的に配備しました。
- 非常用保存水および非常食:乗客全員に行き渡る規模の備蓄を各編成内に分散配置。
- アルミ製防寒ブランケット:停電による空調停止時、厳冬期の車内冷え込みから乗客の体温を守る装備。
- 携帯トイレおよび凝固剤:停電に伴うトイレ使用不能事態に備えた衛生対策品。
- 避難誘導用資機材:線路上への緊急脱出時に使用する携帯型ハシゴやメガホン等の保安品。
愛煙家にとっての憩いの場が、万一の有事において全乗客の生命線を支える「安全の砦」へと生まれ変わった形です。現場の乗務員からも「緊急時に即座に取り出せる分散備蓄スペースが確保されたことで、車内待機の対応力が劇的に向上した」という評価が寄せられており、公共インフラとしての危機管理レベルを一段引き上げる契機となりました。