伏見稲荷大社の真の魅力は、本殿の参拝だけでは終わりません。千本鳥居を抜け、神体山である稲荷山(標高233メートル)を一周する約4キロメートル、所要時間約2時間の「お山巡り」に挑戦してこそ、その真髄に触れることができます。その過酷な石段の道中、ちょうど中腹の分岐点に位置するのが標高約160メートルの「四ツ辻(よつつじ)」です。
この四ツ辻で150年以上にわたり参拝者を温かく迎え入れてきたのが、茶屋「にしむら亭」です。実力派俳優・西村和彦さんのご実家としても広く知られていますが、純粋な茶屋としての実力と歴史は折り紙付きです。ここで供される絶対的名物が、にしむら亭四ツ辻名物ひやしあめの評判を不動のものにしている自家製ひやしあめです。
ひやしあめとは、麦芽水飴を湯で溶かし、生姜の搾り汁を加えて冷やした関西伝統の甘味飲料です。にしむら亭のひやしあめは、生姜のピリリとした鋭い辛味がしっかりと効いており、麦芽の濃厚でまろやかな甘みとのバランスが極めて秀逸です。急勾配の石段を30分以上登り続け、息を切らした身体にこの冷たい液体が染み渡る瞬間、疲労物質が一気に分解されていくかのような爽快感を味わえます。冬場には熱々の「あめ湯」として提供され、生姜の温熱効果で身体の芯から暖まることができます。
にしむら亭の縁側席からは、遠く京都南部の市街地から西山連峰までを一望できる大パノラマが広がります。歴史ある茶屋の風情と絶景、そして伝統のひやしあめが一体となったこの体験は、山麓の喧騒から離れた者だけに許された特別なご褒美といえます。