杉元佐一やアシㇼパ、鶴見中尉率いる大日本帝国陸軍第七師団と繰り広げられる三つ巴の金塊争奪戦において、土方陣営が目指したゴールは私利私欲の蓄財ではありませんでした。その真の目的は、莫大な金塊を軍資金に変え、北海道を日本政府から独立させた多民族国家「蝦夷共和国」を建国することです。
かつて箱館戦争で榎本武揚らと共に目指した理想の国家像を、明治の世においてアップデートした構想でした。当時の日本は南下政策を進めるロシア帝国の軍事的脅威に晒されており、土方は「アイヌやロシア系少数民族、そして武士の魂を持つ者たちが共闘する緩衝国家」を築くことこそが、極東の均衡を保つ唯一の道だと確信していました。
史実との決定的な違いは、「幕府への忠義」を超えて「未来の国家像」を描く戦略家へと昇華している点にあります。史実の土方は敗色濃厚な戦況でも武士としての意地と誠を貫き通しましたが、本作の土方は冷徹なリアリスト。近代兵器を駆使し、ヤクザや脱獄囚を束ね、政治的駆け引きも平然とこなす老練な指導者として描かれています。