揚げ物のしっぽ論争において、必ず引き合いに出されるのがエビフライのしっぽとの違いです。「エビフライのしっぽは食べるけれど、アジフライのしっぽは残す」「いや、エビのほうが殻だから危ないはずだ」など、食卓では混同されがちな両者ですが、生物学的構造と調理特性には決定的な違いが存在します。
エビの尻尾は、カニや昆虫の外骨格と同じ「キチン質(多糖類)」で構成されています。一方のアジフライの尻尾は、魚類の硬骨(アパタイトを主成分とするリン酸カルシウム)と線維性コラーゲンから成るヒレ組織です。この材質の違いにより、加熱時の物理変化が大きく異なります。
エビの尻尾は薄い殻構造であるため、油で揚げると水分が抜けやすく、殻全体が気泡を孕んで比較的もろいパリパリとした食感に変化します。しかし、エビの尾端の内部には「尾尖(びせん)」と呼ばれる水分を含んだ袋状の組織があり、ここに雑菌や汚れが溜まりやすいため、事前の水抜き処理を怠ると油ハネの原因や生臭さの元凶になります。
対照的にアジの尻尾は、中心に通る尾骨の密度が極めて高く、通常の揚げ時間では芯まで熱が通り切っても「骨の硬さ」そのものが残ってしまいます。さらに、アジの尾の根元には硬いウロコの変化形である「ぜいご」が隣接しており、これが咀嚼時の硬度をさらに跳ね上げる要因となっています。