機械の限界に拍車をかけているのが、都市部特有の劣悪な住環境だ。
狭小なベランダに押し込められた室外機。周囲を取り囲むコンクリート壁。隣家の排熱口と真正面から向かい合う配置。逃げ場を失った高熱の空気が室外機のファン周囲に滞留し、吸込口の温度が局所的に50度を超えているケースが日常茶飯事となっている。こうなると、熱交換器は熱を大気に捨てることすらままならない。
さらに厄介なのが、配管の微小な亀裂から徐々に抜けていく「スローリーク(冷媒ガス漏れ)」だ。環境規制によってフロン代替ガスの組成変化が進むなか、近年の猛烈な寒暖差による金属配管の膨張収縮が、接続部の微細なパッキン劣化を早めている。ガス圧が規定値の半分まで落ち込めば、室内機は全力でファンを回しながらも、湿り気を帯びたぬるい空気しか排出できなくなる。見た目には普通に動いているように見えるため、住人が異変を察知した頃には、手遅れの酷暑部屋が完成している。