しのぶが命を落とす直前、現場に突入してきた継子・栗花落カナヲに対して見せた仕草は、涙なしには語れない名場面です。
童磨に抱え込まれ、骨を砕かれながらも、しのぶはカナヲに向けて人差し指を立てるような秘密のサイン(合図)を送りました。それは事前にカナヲへ伝えていた「私が童磨に喰われたら、毒が回るまで決して焦らず距離を取り、好機を待て」という指示でした。しのぶの最後の言葉、心の中でカナヲへ遺したセリフは次の通りです。
「カナヲ、落ち着きなさい。呼吸を乱しては駄目。よく見て、よく考えて。貴方ならできる」
感情を失い、自らの意志で動くことすらできなかったカナヲを救い出し、妹のように慈しんできたしのぶ。そのしのぶが、自らの死の瞬間においてすら感情的な取り乱しを許さず、カナヲを一人の自立した剣士として信頼し、背中を押したのです。そして童磨が地獄の縁でしのぶの幻影に恋心を抱き「俺と一緒に地獄へ行かないかい?」と誘った際、しのぶが満面の笑顔で返した最後のセリフ――「とっととくたばれ糞野郎」は、彼女が背負い続けた人間らしい怒りとプライドの結晶として、語り草となっています。