見沼田んぼの桜回廊を語る上で欠かせないのが、「なぜここが日本一と呼ばれるのか」という疑問です。日本全国には数多くの桜の名所が存在しますが、さいたま市が掲げる日本一の根拠は、「連続して歩くことができる桜並木の総延長」にあります。見沼代用水の西縁(約12.6km)と東縁(約7.8km)を合わせ、足を止めることなく桜の下を歩き続けられる空間として、合計20kmを超える規模を誇っています。
この回廊は、自然発生的に生まれたものではありません。歴史をさかのぼると、江戸時代の享保13年(1728年)、徳川吉宗の命を受けた井沢弥惣兵衛為永が新田開発のために開削した見沼代用水がその舞台となっています。かつての見沼溜井を干拓し、農業用水を引くために造られたこの水路沿いに、本格的な桜の植樹が始まったのは2013年度(平成25年度)のことでした。「目指せ日本一!さいたま回廊プロジェクト」と銘打たれ、途切れていた並木を繋ぐために市民ボランティアや地元企業の手で苗木が1本ずつ植え続けられたのです。
公式発表資料や整備記録によると、事業開始から4年が経過した2017年春、目標であった総延長20kmを突破し、名実ともに「散策できる桜並木として日本一」が達成されました。歴史ある農業遺産を守りつつ、次世代に残る新たな観光・景観資源を創出するという市民協働の熱意こそが、この壮大な桜回廊の根底に流れています。