企業の決算書を見ていると、時折「利益剰余金」の欄に「△」や「▲」、あるいはマイナス記号が付されているケースに遭遇します。これはいわゆる「繰越欠損金」が生じている状態で、企業の財務健全性における危険アラートです。
利益剰余金がマイナスに転落する最大の理由は、単年度の赤字ではありません。過去の黒字の蓄積をすべて吹き飛ばすほどの巨額な赤字が複数年にわたって継続したか、不採算事業の撤退に伴う巨額の減損損失を一気に計上したことが原因です。
注意すべきは、「利益剰余金のマイナス」と「債務超過」は似て非なるものという点です。
利益剰余金がマイナスであっても、創業時や増資時に集めた「資本金」や「資本準備金」が十分に大きければ、純資産全体としてはプラスを維持できます。この段階であれば、まだ会社は倒産しません。しかし、資本金すらも食い尽くし、純資産の部全体がマイナス(資産よりも負債の方が多い状態)になった瞬間、企業は形式上の「債務超過」へと転落します。
利益剰余金がマイナスに陥った企業が再起を図る際、よく使われる財務テクニックが「減資と資本剰余金による欠損填補」です。資本金を1億円以下などに減額して資本剰余金へと振り替え、その資本剰余金を使って利益剰余金のマイナスを相殺(穴埋め)する手法です。これにより、決算書上の見た目を綺麗にして復配(配当の復活)への道筋をつけることができます。決算書を分析する際は、利益剰余金のマイナスが一時的な構造改革によるものなのか、事業自体の競争力喪失による慢性的な出血なのかを見極める洞察力が不可欠です。