「ヨーロッパでもアジアでもある」というトルコをさらに分かりにくくしているのが、「中東」という言葉との混同です。「トルコは中東の国ではないのか?」という疑問を抱く人は少なくありませんが、ここには地理用語の重大なズレがあります。
「アジア」や「ヨーロッパ」が純粋な大陸の地理区分であるのに対し、「中東(Middle East)」は近現代に欧米列強の視点から生み出された政治的・地政学的な地域概念です。地理的・政治的な広義の枠組みにおいて、トルコは中東地域の一部として分類されることが一般的です。
しかし、トルコ人を「アラブ人」と混同することは完全な誤解です。国民の大多数がイスラム教徒である点は共通していますが、トルコは独自の言語体系(チュルク語族)を持ち、かつて広大なオスマン帝国を築き上げた誇り高き歴史を有しています。さらに、1923年の共和国建国以来、国家理念として「政教分離(世俗主義)」を掲げてきたため、厳格な宗教戒律を国法とする多くの中東諸国とは社会システムが根本から異なります。
主要な観点からトルコの多面的なポジションを整理すると、以下のようになります。
このように多面的な顔を持つトルコを的確に言い表す言葉こそが、「ユーラシア国家」です。西欧の近代性と東洋の伝統、キリスト教圏とイスラム圏の狭間に立つことで生じる緊張関係を、トルコは自らの比類なき外交的レバレッジ(交渉力)へと昇華させています。