日本の競泳史に金字塔を打ち立てた北島康介は、かつてしなやかなボディポジションと絶妙な足首のスナップを活かしたキックで世界を制覇した。骨盤を高く保ち、水面近くで効率よく水をとらえる彼の泳ぎは、日本における平泳ぎ技術の指標となった。しかし、その技術すらも時代とともに洗練の度合いを深めている。
その潮流を決定づけたのが、英国の怪物アダム・ピーティーだ。彼のキックは膝をほとんど外へ広げず、驚異的なピッチと瞬発力で水面を切り裂く。パリオリンピック2024 競泳競技を経た現在、世界のトップスイマーたちが実践しているのは、まさにこの「極小の抵抗で最大の推進力を生み出す」スタイルだ。力任せのキックで水を押すのではなく、無駄な投影面積を削ぎ落として身体を前へ滑り込ませる技術が、現代のデファクトスタンダードとなっている。