1979年のNHKドラマ版、2003年の森田芳光監督による映画版、そしてNetflix版には、演出アプローチにおいて明確な差異が存在します。
森田監督の映画版は、名匠ならではのポップでアイロニカルなカット割りやテンポの良い会話劇が特徴でした。約135分という映画の枠に収めるため、四姉妹のエピソードを凝縮し、エンターテインメント性を高めた仕上がりとなっています。
一方で、是枝裕和監督が全話の脚色・演出を手掛けたNetflix版は、向田邦子のオリジナル脚本の精神を最も忠実に、かつ濃密に蘇らせた作品と高く評価されています。舞台設定を現代に移すのではなく、あえて1979年の昭和の東京・冬の空気を完全再現。ちゃぶ台を囲む食事の所作、白菜の漬物を手繰り寄せる音、古びた日本家屋に差し込む陽光の温度感に至るまで、生活のリアリズムが徹底して構築されています。
特筆すべきは、NHK版で強烈なインパクトを残したトルコ行進曲や印象的な劇伴の引用を含め、古典への深いリスペクトを払いつつも、女性たちの内面描写を現代の心理学的解像度で再定義した点にあります。