伝説の幕開けは、極めてタイトなスケジュールと現場の切迫感から始まった。作詞を手掛けた星野哲郎は、日々の生活に追われながらも前を向こうとする大衆の呼吸を逃さなかった。「一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩さがる」。このあまりにも有名なフレーズは、妥協のない人間観察から生まれたリアリズムの結晶だ。単なる精神論ではなく、後退すらも前進のプロセスとして肯定する哲学がここにある。
その詞を受け取った作曲家の米山正夫は、瞬く間に心躍るマーチのリズムへと昇華させた。哀愁を帯びがちだった当時の大衆音楽に、躍動するブラスと軍楽隊仕込みの小気味よいテンポを融合。わずかな時間で練り上げられたこのトラックは、スタジオミュージシャンたちの熱狂的なセッションによって唯一無二のグルーヴを獲得した。