レストランの華やかな肉料理とは別に、アメリカ人の心の拠り所となっているのがマックアンドチーズ家庭料理です。茹でたマカロニにチェダーチーズとホワイトソースを絡め、オーブンで焼き色をつけたこの極めてシンプルなグラタンは、幼少期の記憶と不可分に結びついています。クラフト社が1930年代の大恐慌期に発売した黄色い箱のインスタント製品から、感謝祭の食卓に並ぶ家庭秘伝の焼きマックアンドチーズまで、全米のあらゆる世代がこのクリーミーな炭水化物に郷愁を覚えます。
心理学的に見れば、マックアンドチーズは不安を和らげる「心理的退行」のスイッチであり、激しい競争社会で疲弊した成人が最も無防備な安心感を求める際に選ばれる傾向があります。現地で実施されたフード嗜好調査でも、「最も落ち込んだ日に食べたい料理」の項目で常にトップ争いを演じるのがこの料理です。
こうしたコンフォートフードの精神は、ダイナーの朝の風景にも色濃く反映されています。アメリカ朝食定番メニューの代表格といえば、カリカリに焼き上げたベーコンに目玉焼き、ハッシュドブラウン、そしてメープルシロップをたっぷりかけたバターミルクパンケーキの組み合わせです。南部では、スコーンに似た焼き立てビスケットの上に、白ソーセージの肉汁で作った濃厚なグレイビーソースをたっぷりかける「ビスケット&グレイビー」や、ワッフルの上に揚げたてのフライドチキンを載せてシロップをかける「チキン&ワッフル」が熱烈に支持されています。「甘味と塩味の極端な衝突」を躊躇なく楽しむこの朝食スタイルには、新大陸のフロンティア精神と、朝から旺盛なエネルギーを摂取しようとする開拓時代の名残が見て取れます。
食後の締めくくりとして定着しているアメリカの有名なスイーツもまた、豪快さと伝統が同居しています。「アズ・アメリカン・アズ・アップルパイ(アップルパイのように極めてアメリカ的)」という慣用句がある通り、シナモンを効かせたリンゴを包む素朴なパイや、濃厚でずっしりとしたニューヨークチーズケーキ、フロリダ半島の小粒ライムを使用したキーライムパイなどは、開拓移民たちが手に入る果実を保存・活用するために編み出した郷土の誇りそのものです。