「おやつ」という言葉を漢字で書くと「お八つ」となります。この表現のルーツは、江戸時代に用いられていた不定時法(太陽の運行をもとに1日を昼夜それぞれ6等分する時刻制度)の「八つ時(やつどき)」にあります。当時の八つ時は、現在の時刻に換算すると午後2時から午後4時頃を指していました。
江戸時代の初期まで、日本人の食生活は朝と夕の「1日2食」が基本でした。しかし、明暦の大火(1657年)以降の復興期などを経て都市部の経済活動や肉体労働が活発化すると、朝から晩まで体が持たない職人や農民たちの間で、昼食の導入や力仕事の合間に軽い食事をとる「小昼(こびる・おひる)」の慣習が広がります。この八つ時にとられていた間食が丁寧語の「お」を冠して「お八つ」と呼ばれるようになり、やがて時間帯を問わず間食そのものを指す言葉へと変化していきました。
明治時代に入って西洋式の24時間制(定時法)が正式に導入された後も、八つ時の中間にあたる「午後3時」に小休止をとるリズムは生活の知恵として日本人に残り続けました。さらに昭和の高度経済成長期、カステラメーカーの「カステラ一番、電話は二番、3時のおやつは文明堂」というリズミカルなテレビCMが全国的に大ヒットしたことで、「3時=おやつの時間」という認識が国民的な共通意識として決定づけられたのです。