凶悪事件の報道においては、センセーショナルな見出しや断片的な情報がSNS上で拡散され、事実とは乖離した噂や偏見が形成されるケースが少なくありません。報道分析から浮かび上がる代表的な誤認を整理します。
第一の誤解は、「性的殺人は面識のない見知らぬ人物による通り魔的犯行がほとんどである」という思い込みです。警察庁や法務省の犯罪白書等のデータによれば、実際には知人、交際相手、職場関係者などの顔見知りによる犯行も相当数存在します。力関係の不均衡や別れ話のもつれから、支配欲が高じた結果として暴力がエスカレートする構造が存在します。
第二の誤解は、「加害者は全員が異常な精神状態にあり責任能力が否定されるのではないか」という懸念です。ネット上では精神鑑定の結果に対して不満の声が上がることが多いものの、責任能力が完全に否定されて無罪となるケースは極めて例外的です。カナダの研究をはじめとする臨床心理学的アプローチでも、パーソナリティ障害やサイコパス性は「是非善悪を弁識し行動を制御する能力」を直ちに失わせる精神疾患とは区別され、完全責任能力が認められる判例が大多数を占めています。