なぜ、平和なはずの地方都市で手榴弾が日常的に使用される事態に陥ったのか。その中心に君臨していたのが、北九州市を本拠地とする特定危険指定暴力団「工藤會」だ。かつての工藤會は、警察の取り締まりや自らの意に沿わない民間人に対し、躊躇なく武力を行使する好戦的な組織として恐れられていた。
建設業者への銃撃や飲食店への手榴弾投擲は、みかじめ料の徴取や公共工事への介入を拒絶されたことに対する報復措置だった。組織のトップである総裁・野村悟を中心とする強固なピラミッド型指揮系統のもと、反抗する者には容赦のない制裁が下された。軍用の高性能手榴弾が密輸ルートを通じて暴力団組織に流入し、末端の組員にまで武器が配備されていた現実は、日本の治安史上でも極めて異例の暗黒期といえる。