競り人の威勢の良い掛け声が響き渡るなか、水揚げされたばかりのマグロやスズキが次々と評価されていく。しかし、2026年の市場取引を観察すると、過去の相場観とは明らかに異なる現実にぶつかる。全体の水揚げ数が減少傾向にある一方で、トップクオリティを誇る特定の「一尾」に対する取引額が過去最高を更新し続けているのだ。
「とにかく数を獲って市場に流せば儲かる時代は終わった」。高知県の室戸沖で一本釣りを営むベテラン漁師はそう吐露する。燃油高や資材高騰が追い打ちをかけるなか、漁獲枠の厳格化に伴い、漁業者の生存戦略は「質の極限追求」へとシフトした。かつては一部のセリ師や高級料亭の隠語だった「個体価値」という単語が、いまや水産ビジネス全体のキーワードとして躍り出ている。