本作の最大の魅力は、脚本を手掛けた野島伸司による緻密な心理描写と、それを見事に体現した類まれなキャストの配置にあります。美男美女の軽妙な恋愛劇が主流だった当時の月9において、武田鉄矢という泥臭いリアリティを持つベテラン俳優をヒロインの相手役に据えたキャスティングは、テレビドラマ史を揺るがす大勝負でした。
物語の軸となる登場人物の関係性と、主要な出演者一覧を整理します。
- 星野達郎(演:武田鉄矢):建設会社の万年係長。真面目で心優しいが要領が悪く、お見合いを99回連続で断られ続けてきた42歳の冴えない男。100回目のお見合いで矢吹薫に一目惚れし、全身全霊の純愛を捧げる。
- 矢吹薫(演:浅野温子):オーケストラに所属する30歳のチェロ奏者。美貌と才能に恵まれながらも、3年前に婚約者を交通事故で突然亡くし、心の奥底に癒えないトラウマを抱えている。
- 星野純平(演:江口洋介):達郎の異母弟。司法試験を目指して浪人中の青年。トレードマークの長い黒髪と明るい人柄で、兄の不器用な恋を全力で応援するムードメーカー。
- 矢吹千恵(演:田中律子):薫の妹で短大生。姉の心の傷を誰よりも心配し、達郎の誠実さを認めて薫の背中を押す。純平と行動を共にすることが多い。
- 岡野涼子(演:石田ゆり子):達郎の会社の後輩OL。周囲から軽んじられがちな達郎の誠実な人間性を深く尊敬し、密かに好意を寄せる控えめな女性。
- 藤井克巳(演:長谷川初範):薫の亡き婚約者・真壁芳之のピアノの師であり、著名なピアニスト。後に薫に想いを寄せ、達郎の前に最大の恋敵として立ちはだかる。
- 沢村尚人(演:竹内力):薫と同じオーケストラに所属するバイオリン奏者。薫に好意を抱き達郎を牽制する青年。
- 矢吹孝夫(演:小坂一也):薫と千恵の父親。娘たちの幸せを静かに温かく見守る良き理解者。
この相関図が示す構造の妙は、主人公の達郎とヒロインの薫を取り巻く周囲の人間が、決して単なる舞台装置に留まっていない点です。弟の純平や妹の千恵、会社の後輩である涼子の存在が、二人の絶望的な距離感を少しずつ埋めていく触媒として機能していました。