物語の冒頭、草太が「このあたりに、廃墟はない?」と鈴芽に尋ね、山奥の遺構で見つかる最初の「後ろ戸」。崩れかけたホテルやドーム状の屋根、草木に覆われた温泉街の廃墟は、観客に強烈なインパクトを残しました。
この廃墟温泉街のモデル地について、作中の描写は特定の単一施設ではなく、九州各地の温泉遺構やリゾート跡地を巧みにコラージュしたものと考えられています。大分県の湯布院や別府の歴史ある温泉情緒に加え、宮崎県にかつて存在した大型リゾート施設、さらには鹿児島県の霧島温泉郷や指宿エリアに見られる湯煙の立ち上る山林の雰囲気が融合しています。
特に南九州は火山活動と温泉が密接に結びついた土地柄であり、作中で描かれる「地脈」「要石(かなめいし)」「ミミズ」といった大地と災いのテーマは、霧島連山や桜島といった活火山を抱える鹿児島の風土と極めて親和性が高いと言えます。自然の猛威と恵みの共存を感じられる場所として、霧島の山並みを訪れる巡礼ファンは少なくありません。