彼の執筆スタイルを象徴するのが、妥協を一切許さない現場の空気感だ。納得がいかなければ、完成間近の原稿であっても容赦なく修正液を塗りたくり、時には修正液の層で紙が分厚くなるほど描き直すという。まさに命を削ってコマの中に魂を流し込む作業だ。
スタジオでは、アシスタントたちに対しても妥協のない指導が繰り広げられる。背景の一本線、群衆のひとりひとりの表情に至るまで、「感情が宿っているか」を厳しく問う。漫画業界がデジタル作画へと急速に移行する現代においても、彼の原稿用紙から漂うインクの匂いと物理的な筆圧の凄みは、デジタルツールでは再現できない生のエネルギーを放っている。