キャスティングと画面演出の緻密さも、本作が何十年にもわたり色褪せない要因です。声優一覧を紐解くと、驚くべき事実が浮かび上がります。
主人公キキの声を担当した高山みなみ氏は、実は森に住む絵描きの少女・ウルスラ役との一人二役を演じています。当初、高山氏はウルスラ役としてキャスティングされていましたが、キキ役のオーディションが難航した際、急遽キキのテスト音声を吹き込んだところ、宮崎監督らの心を掴み主役に抜擢されました。
キキが人生のスランプに陥ったとき、森の小屋で「描くのをやめる。散歩したり寝たりする」と助言を与えるウルスラは、いわば「少し先を歩く、未来のキキの姿」です。同一の声優が演じることで、キキが自分自身の未来と対話しているかのような精神的深みが作品に宿ることになりました。
また、トンボ役を演じたのは『名探偵コナン』の工藤新一や『ONE PIECE』のウソップでおなじみの名優・山口勝平氏。当時若手だった山口氏の飾り気のない声質が、空に純粋な憧れを抱く少年の爽やかさを完璧に表現しています。おソノ役の戸田恵子氏、ジジ役の佐久間レイ氏など、昭和から平成を代表する実力派が脇を固めています。
さらに、アニメファンの間で語り草となっているのが「隠れ宮崎駿」の存在です。クライマックスでキキがデッキブラシに乗ってトンボを救出し、街頭テレビの前に集まった群衆が大歓声をあげるカットにおいて、画面右上に眼鏡をかけ、白髪混じりの髭を蓄えた宮崎駿監督本人のキャラクターが明確に描かれています。映画の完成を祝福するかのような茶目っ気ある演出は、視聴時の必見ポイントです。