行事食には、時代を経る中で商業的なプロモーションや伝言ゲームによって誤認されている事柄が少なくありません。報道各社や民俗調査データに基づき、巷で流布する噂の真相を検証します。
恵方巻は「作られたブーム」なのか?
恵方巻の全国的な普及は、1990年代後半に大手コンビニチェーンが仕掛けたマーケティング施策が起点であることは広く知られています。しかし、「完全な創作料理」かというとそうではありません。大正時代から昭和初期にかけて、大阪・船場の花街や海苔問屋街で「節分の丸かぶり寿司」として商売繁盛を祈願していた伝統的な風習が原型として実在していました。伝統的な土着の風習が、現代の流通システムと結びついて全国に再定義された好例と言えます。
「ぼたもち」と「おはぎ」の正体
春のお彼岸に食べる「ぼたもち(牡丹餅)」と、秋のお彼岸に食べる「おはぎ(お萩)」は、基本的に同じ和菓子です。春は咲き誇る「牡丹(ぼたん)」に見立てて大きめの丸型に成形し、秋は咲き乱れる「萩(はぎ)」に見立てて小ぶりの俵型に仕上げます。さらに、秋の収穫直後の小豆は皮が柔らかいため「つぶあん」で作り、冬を越して皮が固くなった春の小豆は皮を除いて「こしあん」にするという、職人の繊細な技術的配慮が本来の作り分けでした。