日常のふとした瞬間に現れる愛犬の行動異常は、中枢神経が発する悲痛なアラートである可能性があります。犬の脊髄空洞症の初期症状として極めて特徴的なのが、皮膚に触れていないのに空中で足を動かし続ける犬の脊髄空洞症 エアスクラッチ(空掻き)と呼ばれる動作です。これは皮膚の痒みではなく、頸髄内部の知覚神経が圧迫されることによって生じる「異常感覚(錯感覚)」が引き起こす特異な行動です。
さらに見逃せないのが、首や肩、頭部周辺にわずかに触れただけでキャンと鳴く、抱き上げた瞬間に唸るといった犬の脊髄空洞症 痛がる仕草です。通常の刺激を激痛として認識してしまう「アロディニア(異痛症)」を発症しており、首を常に下向きに固定して歩く、急に動くのを嫌がる、触られるのを極端に恐れるといった行動変化として表れます。
この病態の根底には、後頭骨の発達不全によって小脳が脊椎側に押し出されるキアリ様奇形(犬の症状)が強く関わっています。脳脊髄液の循環ルートが後頭骨大孔部で物理的に遮断され、逃げ場を失った髄液が脊髄内部へと逆流・滞留することで空洞(シリンクス)が形成されます。初期段階では散発的な仕草にとどまるものの、空洞が拡大するにつれて知覚神経から運動神経へと障害が波及し、ふらつきや起立困難へと進行していきます。