全てを思い出したクレアに対し、ノーマンはついにその本性を剥き出しにします。ここから始まるクライマックスは、息を呑むサスペンス描写の連続となります。
バスタブの恐怖:身体麻痺と迫り来る水面
警察へ通報しようとしたクレアに対し、ノーマンは研究室から持ち出した神経筋遮断薬(ハロセン系麻酔薬)を染み込ませた布で彼女の口元を塞ぎます。全身の自由を奪われ、声すら出せない完全な麻痺状態に陥ったクレアを、ノーマンは水を満たし始めたバスタブへと運び込みます。「罪悪感に苛まれた妻の入浴中の自殺」に偽装するためです。
徐々に上昇してくる水面、鼻口が水没するまでの秒読み、眼球とわずかな指先しか動かせない極限の恐怖――。クレアは必死の抵抗を試み、麻痺が抜けかけた足の親指を懸命に動かしてバスタブの排水プラグを抜くことに成功します。水が引いたことで九死に一生を得たクレアは、隙を突いてノーマンを電話機で殴打し、屋敷から逃走を図ります。
湖底の決着:マディソンの手が掴んだ因果応報
クレアは車で逃走しようとしますが、意識を取り戻したノーマンが車内に侵入。激しいもみ合いの末、車は湖へと転落します。沈みゆく車内でノーマンはクレアを溺死させようと首を絞め上げますが、その瞬間、湖底に沈んでいた「もう一台の車」から解き放たれたマディソンの遺体が浮上します。
腐敗したマディソンの手がノーマンの腕を強く掴み、恐怖に叫ぶ彼を逃がすことなく暗黒の水底へと引きずり込んでいきます。怨念と正義が一体となった瞬間、クレアは辛うじて湖面へと脱出し、朝日が差し込む岸辺へと生還を果たしました。
ラストシーンが象徴する真の解放
冬が訪れたラストシーン。雪が静かに降り積もる墓地で、クレアはマディソン・フランクの墓参りに訪れます。墓石の上に置かれた一輪の赤いバラ。それは、自らを恐怖のどん底に突き落としながらも、怪物である夫の正体を暴き、結果として自分を精神の牢獄から救い出してくれたマディソンに対する、クレアの深い哀悼と感謝の証でした。