警察に犯罪容疑で検挙された場合、原則として警察官はすべての事件を48時間以内に証拠書類や被疑者の身柄とともに検察官へ引き継ぐ義務を負っています。この原則を定めた法規が刑事訴訟法第246条本文です。しかし、この条文には決定的な例外が設けられています。それが刑事訴訟法第246条但書に基づく「微罪処分」の運用です。
法律上、検察官があらかじめ指定した軽微な事件については、警察官は書類や身柄を送致することなく、独自の判断で事件を現場段階で終結させることが認められています。これが微罪処分の法的な正体です。警察庁および各都道府県警察の内部規定(微罪処分捜査基準)によって厳格に要件が定められており、担当捜査官の単なる気まぐれや情状酌量だけで決まるものではありません。
微罪処分として認められるための実務上の基本要件は、主に以下の5点に集約されます。
- 事案が極めて軽微であること:法定刑が比較的軽く、社会的な影響が極めて小さいこと。
- 被害額が僅少であること:窃盗や詐欺などの財産犯において、実質的な実被害が数千円から1万円未満程度にとどまること。
- 実質的被害の回復と示談:被害品が還付されているか、あるいは弁償を終え、被害者が処罰を望んでいないこと。
- 計画性や組織性がないこと:突発的・衝動的な犯行であり、常習的な手口でないこと。
- 深い反省と身元引受人の存在:本人が非を全面的に認め、逃亡や再犯を防ぐ確固たる身元引受人が出頭していること。
これらの要件をクリアした場合、警察署長または指定された専決幹部の判断により微罪処分が下されます。事件そのものは警察段階で放免となりますが、警察が完全に事件を隠蔽するわけではありません。現場の捜査員が警察の微罪報告書手続きを執り行い、毎月1回、どのような案件を微罪として処理したかを一覧の報告書として管轄の地方検察庁へ一括報告する厳正な監理システムが敷かれています。