英国人の母キャサリン・リヴィントンと、日本人の父・片桐健児の間に生まれたカナタ・リヴィントンは、4歳にしてレーシングカートのステアリングを握り、モータースポーツの英才教育を受けて育ちました。英国の名門レーシングスクール「ロイヤル・ドニントン・パーク・レーシングスクール(RDRS)」をトップの成績で卒業し、弱冠19歳にしてF3のテスト生に選ばれるほどの天賦の才を備えていたのです。
しかし、資金難によってフォーミュラカーでのステップアップを断念せざるを得なくなったカナタが、母方の姓ではなく父の姓「片桐夏向」を名乗って来日した背景には、二重の目的がありました。一つは、末期ガンで他界した母が生前愛し続け、行方知れずとなっていた実父を探し出すこと。そしてもう一つが、恩師から授かった「公道のドライビング理論」を実戦の舞台で証明することでした。
その恩師こそ、かつて群馬の峠で不敗神話を打ち立てた伝説のダウンヒラー・藤原拓海です。拓海は英国ラリー選手権で活躍したものの、マシントラブルによる転落事故でプロレーサーとしての選手生命を絶たれ、失意の中でRDRSの講師を務めていました。そこで出会ったのが、鋭敏な反射神経と異常なまでの空間把握センスを秘めた少年・カナタだったのです。拓海が約一年にわたりマンツーマンで叩き込んだ走りの哲学は、夏向という器を通じて、日本の公道レース「MFG」の舞台へと蘇ることになりました。
TVアニメでも夏向の声を担当した声優・内田雄馬氏は、公式インタビューにおいて「カナタは普段は物静かで温厚、丁寧な礼儀正しい好青年ですが、コクピットに収まった瞬間に研ぎ澄まされたレーシングマインドが覚醒する。その静と動のコントラストこそが彼の神髄」と語っています。まさに藤原拓海の遺伝子を受け継ぐ「公道最速の申し子」としての二面性が、世界中のモータースポーツファンの心を掴んでいます。