雄英高校内部に潜む情報漏洩者、いわゆる「内通者」の存在は、USJ襲撃事件や林間合宿編以降、長年にわたり読者間で加熱した最大のミステリーでした。ネット上では「葉隠透の能力が透明化であること」や「校長の心理描写」などあらゆる憶測が飛び交いましたが、原作者・堀越耕平氏の手によって明かされた真実は、想像を絶する苦悶に満ちたものでした。
内通者の正体は、出席番号1番の青山優雅でした。青山は生まれつきの「無個性」であり、フランス系ブルジョワジーである両親が、息子の将来を憂うあまりオール・フォー・ワン(AFO)から個性を授かってしまったことが悲劇の発端でした。その見返りとして一家はAFOの冷酷な支配下に置かれ、情報を差し出さなければ「家族全員の死」を意味するという、絶対的な脅迫の連鎖に囚われていたのです。
この事実を最初に察知したのは、奇しくもファンから長年怪しまれていた葉隠透でした。彼女の密かな追跡と報告により、デクをはじめとするA組の仲間たちが青山の犯行現場を押さえるに至ります。しかし、A組の対応は徹底した「糾弾」ではなく「救済と共生の提示」でした。「お前はヴィランじゃない、被害者だ」と寄り添い、涙を流す青山に対してデクは「まだヒーローになれる」と手を差し伸べました。この圧倒的な包容力こそが、最終決戦でAFOを欺くための「二重スパイ役」として青山を前線に踏みとどまらせる原動力となったのです。
一方で、読者が固唾を飲んで見守ったのが「最終決戦でA組から死亡者が出るのか」という不安でした。結論から述べると、雄英1年A組の生徒20名は、最終決戦において誰一人として命を落とすことなく全員生存を果たしました。
担任である相澤消太(イレイザーヘッド)が右目と片足を失う重傷を負い、ミッドナイト(香山雛子)やマジェスティックといった敬愛するプロヒーローたちが殉職する過酷な現実の中で、生徒たちが誰一人欠けなかった背景には、個々の戦闘力だけでなく、全員で死線を支え合った綿密なチームワークがあったことは疑いようがありません。