金管楽器と木管楽器の違いは素材じゃない?サックスが木管である真相

金管楽器と木管楽器の違いは素材じゃない?サックスが木管である真相

金管楽器と木管楽器の違いは素材じゃない?サックスが木管である真相について押さえておきたい 理由を分かりやすく解説いたします。

ネット上の掲示板やSNSでは、管楽器の難易度に関して「金管楽器は肺活量が必要なパワー系」「木管楽器は肺活量が不要で指先が器用な人向け」といったステレオタイプが定着しています。しかし、音響生理学と現場指導者の見解に照らすと、この言説は明らかな誤解です。

第一の盲点はオーボエの「背圧(はいあつ)」問題です。オーボエのリードの先端は幅数ミリ、隙間は1ミリにも満たない極小サイズです。ここに息を吹き込むには強烈な内圧(吹き込む力)が必要ですが、管内に入っていく空気の体積自体はごくわずかです。その結果、「息が足りなくなる」のではなく「吐ききれずに肺の中に古い空気がパンパンに余る」という過酷な生理現象が起こります。オーボエ奏者はフレーズの合間に「息を吸う」のではなく「余った息を吐き出してから吸う」という特殊な呼吸法を駆使しており、単純な肺活量の多寡では計れません。

第二の盲点はホルンの倍音コントロールの過酷さです。ホルンは全長約3.7メートル(フルダブルホルンのF管時)という長大な管を持ちながら、細いマウスピースを用いて極めて高い音域を頻繁に演奏します。管が長くなればなるほど、同じ運指(指のポジション)で出せる自然倍音の間隔が狭まります。ピアノの鍵盤で言えば、隣り合う半音同士が密集しているような状態であり、唇の締め具合がミリ単位で狂うだけで隣の音へひっくり返ります。ギネス世界記録に「世界で最も演奏が難しい金管楽器」として記載されている所以は、まさにこの倍音の密集度にあります。

「金管=体力勝負」「木管=メカニカルな指先勝負」という二項対立で楽器を捉えると、練習現場で予想外のギャップに直面することになります。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。