結論から明確に述べると、自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)に特有の顔貌(顔立ちの造作や骨格の特徴)が存在するという医学的根拠はありません。日本小児神経学会や米国精神医学会(APA)が定める確定的な診断基準においても、身体的・骨格的な顔の特徴は診断項目に一切含まれていません。
それにもかかわらず、なぜGoogleやSNSで「自閉症 顔つき 特徴」といった検索が絶えないのでしょうか。そこには、視覚的な印象と神経発達特性が複雑に絡み合った「認知のズレ」が存在します。
人間は他者を認識する際、顔のパーツそのものだけでなく、視線の動き、まばたきの頻度、微細な表情筋の動き、感情の表出パターンを無意識に統合して「顔つき」として捉えています。自閉症の特性を持つ人々は、感情がないわけでも表情筋に器質的な障害があるわけでもありませんが、後述する脳機能の特性によって「定型発達者が予期するタイミングで表情を動かさない」「相手の目を見つめ続けない」といった特徴を示します。この非言語コミュニケーションの差異が、観察者の脳内で「独特の顔つきをしている」という誤った言語化に変換されてしまっているのが真相です。