近年、教育用彫刻刀の標準装備となりつつあるのが「安全ガード」です。刃の周囲を樹脂製パーツが覆い、指先が直接刃に触れにくい構造ですが、保護者や教育関係者の間では彫刻刀安全ガード必要性の真相を巡って激しい議論が交わされてきました。
日本文教出版などの教科書会社や各自治体の小学校図工彫刻刀怪我防止ガイドラインによると、図工の授業における負傷事故の約85%が「彫刻刀を持つ手ではなく、版木を押さえる反対の手の親指や人差し指」に集中しています。安全ガードはこの最大の受傷リスクを劇的に低減させるため、特に作業に慣れていない導入初期の児童にとっては極めて有効な防護柵として機能します。
一方で、刃先の視認性が悪くなり細かい彫り跡が見えにくい点や、ガードに頼るあまり「刃の進行方向に手を置かない」という刃物扱いの基本倫理が身につかないという懸念を示すベテラン教員も存在します。現在流通している最新モデルの多くは、スライド式で出し入れできたり、取り外して通常刃として使えるハイブリッド構造が主流となっており、導入期はガードを出し、技術が身についた高学年や中学校では収納して使うという柔軟な運用が推奨されています。
また、絶対に妥協してはならないのが小学生彫刻刀左利き用の選び方です。彫刻刀セットに含まれる「平刀」や「丸刀」は左右対称ですが、「切り出し刀(印刀)」は片刃構造になっています。右利き用は刃の傾斜が左側にあり、左手で持つと削り面が逆になって刃が木材に深く食い込み、コントロールを失って重大な事故につながります。左利きの子どもには、必ず切り出し刀の刃の向きが反転した「左利き専用セット」を用意してください。メーカーによってはケースの開閉方向まで左利き仕様に設計された製品も登場しています。