かつてないほど時短や簡便化が叫ばれるいま、手間をかけて野菜を素揚げするクラシックな家庭料理が見直されている。惣菜売り場や外食チェーンでも定番のなすの揚げ浸しだが、家で揚げたてを出汁にジュッと浸す瞬間の高揚感は、手作りでしか味わえない贅沢だ。
NHK(日本放送協会)の長寿番組『きょうの料理』で彼女がこの一皿を披露して以来、日本中の台所で幾度となく再現されてきた。派手なスパイスや複雑な工程はない。冷蔵庫にある身近な調味料だけで、料亭に負けない深いコクを生み出す。その普遍性こそが、情報が氾濫する時代に原点として求められている理由だろう。