『馬と鹿』の発売日・配信の経緯を振り返ると、2019年8月12日にデジタル先行配信がスタートし、同年9月11日にCDシングルとしてリリースされました。池井戸潤の小説を原作とし、大泉洋が主演を務めたドラマの主題歌として起用された本作は、第1話のクライマックスで何の前触れもなく突如オンエアされ、SNSを中心に凄まじい衝撃を呼びました。
関係者の証言や当時のインタビューによると、米津玄師はドラマの台本を読み込み、ラグビーという過酷なスポーツが持つ「生々しい肉体の衝突」「泥臭さ」、そして挫折を味わった大人が再び立ち上がる「愚直な熱量」に強い共感を覚えたといいます。当時、メガヒットを記録した『Lemon』の次なる一手として世間の耳目が集まる中、彼が選んだのはスマートで洗練されたポップスではなく、あえて「痛々しいほどの泥臭さ」と「情熱の軋み」を前面に押し出したサウンドでした。
大泉洋演じる主人公・柴門琢磨が率いるラグビーチーム「アストロズ」の選手たちが、どれほど叩きのめされても前を向く姿。その背中を後押ししたのは、単なる耳障りの良い応援歌ではなく、痛みを分かち合い、泥に塗れることを誇るかのような、この重厚な旋律と歌詞でした。