食事制限の議論において、前日のアルコール摂取と朝の服薬に関する誤った俗説が蔓延しています。
1. 前日の飲酒が引き起こす長期代謝ノイズ
「前夜21時までに飲み終えればアルコールも分解される」という認識は極めて危険です。アルコールは肝臓で最優先で分解されますが、その過程で中性脂肪の合成が急激に亢進し、翌朝まで血中に高濃度の中性脂肪が残存します。さらに、アルコール代謝物であるアセトアルデヒドの毒性により、肝細胞膜の透過性が変化し、γ-GTPやAST/ALTが一過性に上昇します。正確な肝予備能を評価するためには、受診前日の一日禁酒(最低24時間以上のアルコールフリー)が医学的スタンダードです。
2. 常用薬の服用判断:自己判断での中断は重大事故のもと
「検査前はすべての薬を止めるべき」という思い込みは生命に関わります。服薬に関しては、薬剤のカテゴリごとに厳格なルールが存在します。
- 高血圧・心臓病の薬:原則として、当日の早朝(検査の2〜3時間前まで)に少量の水で服用することが指示されるケースが大半です。血圧が極端に高い状態では採血のショック(迷走神経反射)や胃カメラ時の血圧急上昇を招き、検査自体が中止となるリスクがあるためです。
- 糖尿病の薬・インスリン注射:絶食状態で血糖降下薬を服用したりインスリンを投与したりすると、重篤な「低血糖発作(意識障害や昏睡)」を引き起こすため、検査前の絶食時は原則として休薬・注射中止となります。
主治医の事前指示がない限り、決して受診者本人の独断で服薬を止めたり、逆に指示を無視して勝手に飲んだりしてはなりません。