物語の中盤の舞台となる「サニーサイド保育園」は、アンディの部屋を離れたおもちゃたちにとって一見すると理想郷のように映ります。そこで強烈なインパクトを残すのが、ファッションドール界の永遠のアイコンであるケンとバービーの出会いです。
ケンの日本語吹き替えを担当した東地宏樹の演技は、本国でマイケル・キートンが見せた「自惚れの強さと隠しきれない小物感」を完璧なニュアンスで再現しました。豪邸のクローゼットで繰り広げられる過剰なファッションショーの場面は、映画史に残るコメディシーンと言っても過言ではありません。対するバービー役の高橋理恵子は、持ち前の甘く可憐なトーンを響かせつつ、いざ仲間が危機に瀕すると知性溢れる尋問官へと豹変するギャップを鮮やかに演じ分けました。
サニーサイドには、この二人以外にも独裁体制を支える異様な新キャラクターが多数配置されています。
- ビッグ・ベビー:右目が半開きになった巨大な赤ちゃん人形。ロッツォの忠実な処刑人として振る舞いながら、かつての持ち主への思慕を捨てきれない哀しき巨躯。
- チャッターフォン:車輪付きの古典的な電話型おもちゃ。保育園の暗部と脱出の厳しさをウッディに囁く、スパイ映画の情報屋さながらのキーパーソン。
- トゥイッチ&チャンク&スパークス:昆虫戦士、岩石怪獣、ロボットという80年代アクションフィギュアのパロディであり、夜の保育園を巡回する屈強な看守たち。
- ブックワーム:懐中電灯を携えた読書好きのイモムシ。おもちゃの取り扱い説明書を管理する図書係。
一見無邪気な保育園という空間に、こうした「夜になると監視社会へ変貌するディストピア構造」を持ち込んだピクサーの脚本術は、まさに大人をも戦慄させる凄みを持っています。