映画の主軸が競技かるたであったことから、歌詞の構造には『小倉百人一首』に収められた名歌のスピリットが色濃く反映されています。特に重要な参照点となっているのが、以下の代表的な恋歌です。
第一に、在原業平の「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」。激しい情熱と水の流れを対比させたこの歌は、タイトルの「から紅」という語彙そのもののルーツであり、歌詞の色彩設計のベースとなっています。
第二に、式子内親王の「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする」。誰にも明かせない恋心を死ぬほどの覚悟で隠し通す「忍ぶ恋」の激情は、和葉の胸中に渦巻く秘めた決意と完全にリンクしています。
歌詞中に登場する古風な語彙やふりがなの扱い(「紅葉(からくれない)」「想ひ(おもい)」など)は、単なる懐古趣味ではありません。千年前の平安贵族も、現代を生きる私たちも、愛する人を前にしたときの無力さや狂おしさは何一つ変わらないという「時空を超えた感情の共鳴」を証明するための高度な文学的アプローチなのです。