音楽評論家の間でも、西城秀樹と郷ひろみのボーカルアプローチの違いは常に議論の対象となってきました。西城秀樹の歌唱力は、日本人離れした太い低音域から突き抜けるシャウトまでを自在に操るロックシンガーとしての資質に満ちていました。スタジアムでの単独コンサートを日本で初めて成功させたダイナミズムは、秀樹の天性の肺活量と感情表現があってこそのものでした。
一方の郷ひろみは、デビュー当初のアイドル的な声質から弛まぬボイストレーニングとニューヨーク留学などを経て、独自の艶やかなハイトーンボイスと極めてブレの少ないボーカル技術を確立していきました。60代・70代を迎えてもキーを落とさずに歌い踊るストイックな姿勢は、昭和から続くプロフェッショナリズムの極致と言えます。
二人の関係は「どちらが優れているか」という単純な比較ではなく、秀樹の爆発力に刺激を受けたひろみが表現力を磨き、ひろみの洗練された華やかさに刺激を受けた秀樹がエンターテインメント性を高めるという、希有な相乗効果を生み出していたのです。