自律神経と腸の研究で第一人者として知られる順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、現代人の慢性的な便秘に対して、臨床現場の視点から警鐘を鳴らし続けています。消化器病学の知見によれば、腸の動きは自律神経の交感神経と副交感神経のバランスに深く連動しています。ストレスや寝不足で交感神経が優位になると、腸の動きはピタリと止まってしまうのです。
ここで重要になるのが最新の栄養学の視点です。単にお腹を膨らませるだけでは便秘は治りません。むしろ不溶性食物繊維(野菜のシナチクや根菜類など)ばかりを過剰に摂ると、便の嵩(かさ)が増えすぎて逆に詰まり、激しい腹痛を引き起こすリスクすらあります。腸管内で水分と混ざり合い、ぬめりを生み出して便の滑りを良くする水溶性成分とのバランスこそが生命線なのです。
小林教授らの研究でも示されている通り、腸内に100兆個以上も存在する腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性を保つことが、排便コントロールの根本治療につながります。菌の餌となる水溶性繊維と、菌そのものを補充する発酵食品を同時に摂取する「シンバイオティクス」を日常の食卓に取り入れること。これこそが、胃腸トラブルを予防する最も合理的で科学的なアプローチです。